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東京高等裁判所 平成11年(行ケ)235号 判決 2000年3月30日

原告 ロンシール工業株式会社

代表者代表取締役 A

訴訟代理人弁理士 B

同 C

同 D

被告 特許庁長官 E

指定代理人 F

同 G

同 H

同 I

主文

特許庁が平成10年異議第70991号事件について平成11年6月7日にした決定を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1請求

主文と同旨の判決

第2前提となる事実(当事者間に争いのない事実)

1  特許庁における手続の経緯

原告は、考案の名称を「防滑性床材」とする実用新案登録第2550766号(平成5年6月14日実用新案登録出願、平成9年6月20日設定登録。以下「本件実用新案登録」といい、その考案を「本件考案」という。)の実用新案権者である。

東リ株式会社は、本件実用新案登録につき登録異議の申立てをした。

特許庁は、この申立てを平成10年異議第70991号事件として審理した結果、平成11年6月7日、本件実用新案登録の請求項1ないし6に係る実用新案登録を取り消す旨の決定をし、その謄本は、同月28日原告に送達された。

原告は、本訴提起後である平成11年11月19日、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とする本件考案の実用新案登録請求の範囲の訂正、及びそれに伴う明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書及び図面の記載の訂正を求める訂正審判を請求したが(平成11年審判第39097号)、特許庁は、平成12年2月16日、その訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし、その謄本は、同年3月8日原告に送達された。

2  本件考案の要旨

(1)  本件訂正審決による訂正前の本件考案の要旨

【請求項1】床すべり抵抗係数が0.4~0.9のポリマーからなる領域と、床すべり抵抗係数が1.5以上のポリマーからなる領域とが、それぞれ露出部分の表面積比が10:90~90:10の比率で複数に分散して床材表面が形成されていることを特徴とする防滑性床材。

【請求項2】ポリマーからなる領域が斑状に分散して床材表面を形成している請求項1に記載の防滑性床材。

【請求項3】ポリマーが粒状であり、且つ該粒状ポリマーが密接して表面層を形成している請求項2に記載の防滑性床材。

【請求項4】少なくとも1種のポリマーが不連続な粒状であり、他方のポリマーが連続層を形成している請求項2に記載の防滑性床材。

【請求項5】少なくとも一方のポリマーからなる領域の長径が0.5~50mmである請求項1~4に記載の防滑性床材。

【請求項6】床材の表面が略平坦に形成されている請求項1~5に記載の防滑性床材。

(2)  本件訂正審決による訂正後の本件考案の要旨

【請求項1】床すべり抵抗係数が0.4~0.9のポリマーからなる領域と、床すべり抵抗係数が1.5以上のポリマーからなる領域とが、それぞれ露出部分の表面積比が10:90~90:10の比率で複数に分散して、深い凹凸や粒子の突出がない略平滑な床材表面が形成され、床すべり抵抗係数が0.4~0.9のポリマーからなる領域が塩化ビニル樹脂又は塩化ビニル系樹脂からなり、床すべり抵抗係数が1.5以上のポリマーからなる領域が塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイからなることを特徴とする防滑性床材。

【請求項2】ポリマーからなる領域が斑状に分散して床材表面を形成している請求項1に記載の防滑性床材。

【請求項3】ポリマーが粒状であり、且つ該粒状ポリマーが密接して表面層を形成している請求項2に記載の防滑性床材。

【請求項4】少なくとも1種のポリマーが不連続な粒状であり、他方のポリマーが連続層を形成している請求項2に記載の防滑性床材。

【請求項5】少なくとも一方のポリマーからなる領域の長径が0.5~50mmである請求項1~4に記載の防滑性床材。

【請求項6】床材の表面が略平坦に形成されている請求項1~5に記載の防滑性床材。

3  決定の理由

決定の理由は、別紙決定書の理由写し(以下「決定書」という。)に記載のとおりであり、決定は、平成10年10月13日付け訂正請求(平成11年3月23日付けで訂正請求書を補正)につき、訂正明細書の請求項1ないし6に係る考案は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、上記訂正請求は認められないと判断した上、本件請求項1に係る考案(本件訂正審決による訂正前のもの)、同請求項2に係る考案、及び同請求項4に係る考案は、刊行物1に記載された発明(特開昭59-8869号公報)に基づいて、当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、同請求項3に係る考案、同請求項5に係る考案及び同請求項6に係る考案は、上記刊行物1に記載の発明及び周知技術(ポリマーが粒状であり、かつ該粒状ポリマーが密接して表面層を形成すること)に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、いずれも実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないから、取り消されるべきである旨判断した。

第3決定の取消事由

1  前記第2、1のとおり、本件考案の実用新案登録請求の範囲は、本件訂正審決により、前記第2、2(2)に記載のとおり訂正された。

2  したがって、決定は、結果的に本件考案の要旨の認定を誤ったものであり、その誤りは、決定の結論に影響するものである。

第4決定の取消事由に対する被告の認否

決定の取消事由1の事実は認める。

理由

1  本件訂正審決により本件考案の実用新案登録請求の範囲の記載が前記第2、2(2)のとおり訂正されたことは、当事者間に争いがなく、この事実によれば、決定は、結果的に本件考案の要旨の認定を誤ったものである。

そして、上記要旨認定の誤りは決定の結論に影響するものと認められるから、原告主張の取消事由は理由がある。

2  よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 市川正巳)

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